これまでに大小7業種もの企業を経営した実体験に基づき、リピーター・ファン創出コンサルタントとして活躍をしている一圓克彦氏。活動は多岐にわたるが、中でも講演は面白くて分かりやすいと定評があり、登壇回数は1,200回以上に及ぶ。全国を駆け回り成果を出し続ける秘訣に迫るためインタビューした。
現在の主な活動を教えてください。
「大きくは二つあります。一つはマーケティング系のコンサルタントとしての仕事と、もう一つはセミナーや講演講師としての仕事です。あと今年から注力しているのが音源販売ですね。コンテンツ教材販売みたいなものを今年は立ち上げようかと。
他にはセミナー講師の育成とかもやっています。あとは全く違うジャンルの会社の社外取締役として活動をしたり、そんな感じです。」
コンサルタントとして活動されるまでのキャリアは?
「大学3年生の時に大阪で有限会社の経営者になりました。女の子にもてたくて、社長と名乗ったら絶対もてると思いまして(笑)。ですから会社を作ることそのものが目的だったので、会社を作ってから何をしようか考え、飲食店を始めることにしました。
飲食店を始めましたが、何も儲からないわけですよ。生ビール1杯100円とかにして赤字が5倍になったり。大きな失敗もいろいろしましたが、なんとか2年で軌道にのりました。売上ではなく利益の重要性を痛感しました。
大学を卒業した年に介護福祉の会社を立ち上げ、2社目を経営することになりました。介護保険が始まったのを機に、昼間空いている店のスペースを活用して何かできないかと考えまして。お弁当を作って宅配サービスを始めました。
多店舗展開するにあたって資金が必要でしたが、大学を卒業したばかりの自分に誰もお金を貸してくれないんですよ。そこで資金繰りのために会社員になろう思い、IT企業で会社員を5年経験しました。当時まだ珍しかった『雑誌を見て携帯で服を買う』ビジネスを立ち上げたり、大手メーカーのウェブ制作をやったりしてました。」
26才の時に当時勤めていた会社を辞め、義父が経営する年商160億円企業に2代目経営者として入ることを決意。闇雲に新規開拓を行う営業スタイルから、既存顧客のオーダーを重要視する経営に切り替えたという。その結果、6%の顧客離れ防止で利益率を21%改善。事業規模は200億円を突破した。
「リサイクルトナーカートリッジの製造・販売・卸し等をやっているグループ会社でした。営業をやったのち管理本部の責任者に就任しましたが、てんでバラバラにみんな動いていまして。まずは数字データの洗い直しをして、顧客管理システムを開発しました。
他にはネット通販ができるようにしたり、各拠点をVPNでつないでリアルタイムで情報を更新できるようにしたり、システム会社の子会社を作ったりということをやっていました。
ただ、社員が800人とかになり、いろいろと面倒になってきたわけですよ。自分はビジネスをやりたいのに、やっている仕事が政治の仕事というか。会合に顔を出したり、挨拶に行ったり、社員同士も先代と二代目の派閥があったり。2007年32才の時、持っていた株を全部買い取ってもらって辞任しました。もう一人で仕事したいわ、組織とかいらんねんと思って。
何やろうかなと思った時に、旅するのが好きなので、ブラブラできる仕事ないかなぁと。そんな時、セミナーチラシをたまたま手にして講師プロフィール欄を見ると、『北は北海道から南は沖縄まで、日本全国を飛び回っています。』と書いてありまして。これやで、これやろうと。どうしたら講師になれるんだろうと思って調べたら、みんなコンサルタントと言っているので、コンサルタントになろうと思ったのはそこですね。不純ですが(笑)。」
コンサルタントとしての一件目の仕事は講師業になるのでしょうか?
「そうですね。ただ仕事らしい仕事が取れるようになったのは2年目からです。当時から扱うテーマはリピーターづくりに特化していましたが、セミナーをやっても申込はゼロ。どうしたら良いのか悩んでいた時に、本を出したら良いと言われまして。2010年に『0円で8割をリピーターにする集客術』という本を出して、そこから講演の依頼が増えましたね。
頑張って自主開催のセミナーをたくさんやっていたので、呼ばれて喋りに行くってなんて楽なんだろうと思いました。集客をしなくて良いので。それからは呼ばれて喋る講演講師を極めようとシフトチェンジしました。コンサルタントなのに講演がメインみたいな。」
講演の営業は自分でコントロールするのは難しく、待ちの営業のように見えるが、攻めの営業であると一圓氏は言う。講演の依頼が続くように、自分から仕掛けるためにはどうすればいいのだろうか?
「講演というのは、誰が発注してどういう経路で受注するのかが見えないと、完全に待ちになってしまいます。ただ講演のマーケットを理解できれば、ツボというか攻めどころが分かってきます。主催者側が必要なツールを用意するだけで随分変わりますね。
例えば、講演の企画書を作る人は数パーセントしかいませんが、主催者としては絶対いる訳です。数パーセントの更にトップに入るために、私は告知用のA4のチラシも作ります。主催者は講演会をするにあたって告知をするので、よかったら使ってくださいとチラシを渡すだけで受注率が上がります。商工会議所のセミナーでは指導員がレポートをつくらないといけないので、ひな形も作りますよと言うと、それも受注につながっていきます。
内容の良いセミナーが売れるセミナーという訳ではなく、使い勝手が良い講師というのが一番売れるんですよ。そこを見極めてからですね。マーケットの分析をして、待ちのようだけど地味に攻めていますね。」
何かで飛び抜けると目立つので、まずは講演業に特化して、当初から1,000回を成し遂げようと思ってやっていたと話す一圓氏。その1,000回を越した今も依頼は絶えず、年間200回ペースで全国講演を続けている。
コンサルタントとして、講師として、ブレイクスルーしたきっかけは?
「ブレイクスルーした感はないです。ただ話とか講演が決まるようになったのは、スライドとレジュメを使わなくなってからですかね。レジュメなしでやりだしたら講演の依頼が増えました。多分、聞いている人の顔色を見ながら抑揚をつけたり、話題を変えたり省いたり加えたり、というのがやりやすくなったからだと思います。
トークに関して学んだことは、人のセミナーを徹底的に聞いたり、参加したりしましたね。こういったらうまくいくとか滑るとか。あとは落語のCDを買ってランダムに聞き流していました。一人で何十分も喋って飽きさせないというのは落語が一番かと思って。一番勉強になるのは間の取り方ですよね。」
弊社代表の横須賀輝尚が始めて一圓氏の講演を聞いた時、こんなに役に立つ情報をここまで面白く話せる人がいるんだと衝撃を受けたという。余裕を持って笑いを取りにいけるようになったのはここ3年くらいであると一圓氏は言う。
「最初の頃は結構まじめにやってました。昔の笑いの取り方ってノリと勢いで、でんがな、まんがな的な感じで、ワーとやってヤーって感じでしたが、3年くらい前から狙って笑いを取れるようになりましたね。仕込んでおいて、スッと引いて真空状態になった所にワッと笑いが出るみたいな、そういう笑いの作り方になってきました。
なんで人が笑うのかとか、心理学を勉強してきたことも大きいと思います。笑いだけではなく、分かりやすかったとか楽しかったと言ってもらうことがゴールでして。楽しかったというのは、ニアリーイコールで分かりやすかったとか腑に落ちましたなんですよね。腑に落ちるための伝え方のロジックを一生懸命研究して、これだというのを発見したのが大きいと思っています。
何かと言うと、理論を1個喋ったら、必ず事例は2つ並列で用意します。理論を喋って事例を1個紹介しましょうという人はいっぱいいますが、理論と事例だけだと頭の中で対比する時に、ん?ってなるんですよね。事例が2つあると事例同士をまず比較して、その最大公約数と理論を比較するので、ストンと頭に入ってきます。これをやり出してからのってきましたね。」
コンサルタントとしての強みは?
「何でも理詰めで考えますね。私は理系なんです。両親も妹もシステムエンジニアという。相談や問題解決も理詰めで考えています。今はリピーター作りが何だかんだと言っていますが、これも世に出ていくためのひとつのアイテムに過ぎなくて。
自分のビジネスを分解していくと、入り口になるのは講演で、ギャラと交通費をいただきながら見込み客を獲得していきます。営業活動で獲得した見込み客をメルマガやブログで維持しながら、この人達に自主開催のセミナーに来ていただいたり、コンサルティングを買っていただくと。
コンサルティングをして業績アップで良かったねというのがゴールではなく、そのあと顧問契約をしたり出資して役員になったりとか、チョロチョロと入ってくる利先を100社位作れればと思っています。100社作れたら、100社のうちの1社と1社を組み合わせて合弁会社を作ったりとか。
というように何かと何かをずっと有機的に組み合わせていくのが趣味で、有機的化合みたいのは燃えるんですよね。できあがった物を素材にして、また次の何かを作るという。
周りから見ている人はノリでやっていると思ってる人が多いでしょうし、そう見せている所もありますが、なんでも理詰めで考えています。この手でうまくいかなかったら次の手と、常に予備の策を用意して、キャッチアップできるように備えています。」
一圓さんの定期顧問契約にはみなさん一番何を期待されているんですか?
「今のお客さんに目を向けず、新規開拓を広げるなというのが私の考えなので、社員の意識改革をして欲しいとか、スタッフ研修して欲しいという要望が多いですね。現場の人は売上を作るために安売りをして新規のお客さんを集めようとするので、そういう風土をなくしてくださいというのが一番だと思います。
私が唱えるリピーター創出の理論は、従来型のマーケティング理論と逆行しているので、闇雲に集客するなというのが僕のコンサルティングの軸なんですよね。今のお客さんに更につぎ込んでくれと。」
コンサルタントとして必要だと考える知識とかスキルは何だと思いますか?
「コミュニケーション能力でしょうね。そこに尽きると思います。スキルとかいらないですし、聞かれてから調べれば良いと思うんですよ。要は知識やノウハウを提供する前に、クライアントが『よし、やってみよう』とか、『この人と頑張ってみよう』といった気持ちになることが、まずスタートラインに立つということだと思います。
そこをすっ飛ばして知識を振りかざすと、まぁ人間は感情の生き物ですから。言っていることは正解かもしれないけど、なんかうっとおしくなってしまうみたいな。」
一圓さんのコミュニケーションスキルはどうやって磨いていかれたんですか?
「転校生だったんですよ、ずっと。小中で4回転校してました。名字が変わってるし、大阪弁で変なしゃべり方で、変な名字で、全身アトピー性皮膚炎。変な奴が来たぞって、普通にやってたらいじめの対象になるので、まずは人間観察をする訳ですよ。
で、いじめの対象にならないよう、誰と仲良くすべきなのか。これを必死で考える。考えるというよりも、小学生の私としたら死活問題ですからね、必死で感じ取ろうとするワケです。
そうやって鍛えられたのかな?なんて思います(笑)」
コミュニケーション能力に自信がないとか、もっと上達したいと思っている人はどこから始めればいいのか?
「コミュニケーション下手というのは、いろいろタイプがあると思うんですよ。単に口べたとか。口下手な人で顕著なのは、自分に自信がないんですよ。自分に自信がないから、こう言われたらどうしようって、ちょっと卑屈な感情が邪魔するわけで。だから余計へたくそになってしまうんでしょうね。
だから自分に自信をつければ良いんですよ。そのために僕が今勧めているのはライザップに行けと。肉体的な自信もそうですけど、精神的な自信をつけるためには、日刊メルマガを出せと。
一年続いたら『俺やったら結構できるやん』って自尊心が少し形成されて、それが自信につながっていくので、余裕も出てきてコミュニケーションが上達すると。話し方とか読心術とか学んでも全く意味がないので、まずは自分に自信をつけるところから始めるべきだと思います。」
コンサルタントにとって大切な考え方とかマインド的なことがあれば教えてください。
「まずは『自分のコンサルティングを受けると、絶対に売上が上がる』という絶対的な自信がないとダメですよね。
私は初めての大型契約が年間で300万というものでした。新規開拓ばかりでリピーターづくりに手がまわってないので、そういう仕組みを考えて欲しいと。責任重大とは思いますが、楽しみの方が大きいですね。
逆にダメだと思うコンサルタントは、ベクトルが自分向いてる人。相手が良くなって、最終的にそれが跳ね返って自分の評価になるのに、『契約取りました』とか『売れています』と言う人はいけていないと思います。
あと結構の人が言っていて、私もそう思っていますが、『コンサル』と言う人は好きではないです。コンサルタント、コンサルティングと言ってねと。チープになるんですよ。家で趣味の延長でやっていますみたいな。これからの時代なんちゃっては淘汰されていくと思いますけど。
私は見たことがないことやイメージできないことはできないと思っているので、ずっと個人事業主を相手にしてきた人が中堅企業のコンサルティングをするというのは難しいと思っています。現場を知らないというか、実体験としてみたことがないというか。
例えばコンサルタントで100万円のフィーをもらうと思うんだったら、最低自分が100万円のフィーを払ってコンサルティングを受けた経験がないと、お金をもらうってどういうことかとかリアリティーがないので。コンサルタントを使ったことがない人がコンサルティングをするなと。人ってどういうものにお金を払っているんだろうって勉強になりますよね。受ける立場を知らないとだめだと思います。」
一圓さん自身はどういう勉強されていますか?
「セミナー音源みたいのは移動中ずっと聞き流していますね、いろんな人の。あと実際セミナーにもよく参加しています。テーマで選ぶというよりは講師で選んでいます。ノウハウを学びたい訳ではなく、こういう時にはこう判断するとか、こう反応するといった、それぞれの人間の脳みそのOSみたいなものに触れたいので。
喋っている人のそういう考え方もあるんだとか、なるほどねといった気付きみたいなものを得たいのでいろいろ聞いている感じです。この間でそれを言うんだとかあるじゃないですか?機微というか、ここで声が大きくなったから一番これを言いたいんだろうなとか。やっぱり音源っていいですよね。その人の人となりが出ますからね。」
また一圓氏はこれだけ軌道に乗って活躍している現在も、自身に二人のコンサルタントを長い期間つけている。目的の一つは軌道修正という。二人のコンサルタントの具体的な活用方法について聞いてみた。
「一人の人にはコンサルティングというか、その方を介した人脈や情報をお金で買っているようなものです。様々な人と会っていろいろな情報が入ってくる方なので、それを月に一度知識としていただいています。
もう一人の方もほぼ同じですね。ただその方は私と同じく今年から音源を販売されているので、出し方や売れ方など一歩先のことをやってもらって、それを体系化していただくみたいな。知識をもらうというかその人の周りにあるものをまとめて吸収させてもらっています。」
今後どのようなスタイルで活動されていくのでしょうか?
「抽象的な言い方すると、もっと筋肉質にビジネスを組み立て直したいと思っています。絶対倒産しようのない会社というか事業モデルというのに近づけていきたいなぁと。仕組みでまわって、仕入れ原価無用で、やればやるほど逓増していくビジネスモデルですね。
音源の売り方も例えば、音源同士が少しリンクしてて、こちらを聞いたら少しリンクしている次の音源も気になるという。そして1度音源を買った人には自動的にクーポンが届いて、ついつい買ってしまうと。
一度入ったら抜けられないアリ地獄をバシッと作りたいですね(笑)。そこにはセミナーとか音源とかいろいろあって、メルマガやブログの読者の方が入ってきたら、うちの何パーセントがズルズルと最後までいくと。これをやっておけば、自分が倒れようが何しようがまわっていくビジネスモデルができると思っています。
今からは私はアリ地獄の滑りをいかによくするか、またアリ地獄に入っていただいた方がいかに心地よく滑っていけるかというのを理詰めで作っていきたいです。なんだか例えが不適切極まりないですが(笑)。」
「リピーター・ファンこそが大切にすべきお客様」という信念のもと、講演やコンサルティング活動をして全国を駆け巡っている一圓氏。今回の取材で印象に残ったことは、心理学をベースに何でも理詰めで考え、笑いや分かりやすさを追求されていることである。「楽しかった≒分かりやすかった」という考えのもと、腑に落ちる伝え方を研究し続けてきたことが、一圓氏に講演・コンサルティングの依頼が絶えない理由であろう。
またもうひとつ印象的だったのは、講演回数が1,200回を越した今も、移動時間や空き時間にセミナー音源や落語などを聞いて、常に勉強されていることである。「こういう時にはこう判断するとか、こう反応するといった、それぞれの人間の脳みそのOSみたいなものに触れたい。」という言葉が実に一圓氏らしい。音源を聞いて情報や話し手の考え方を学ぶことはもちろん、間・テンポ・人情の機微に触れ、気付きとして学び、実践の場でいかしていることが一圓氏の強みと言えるのではないだろうか。
(取材・執筆:パワーコンテンツジャパン株式会社 木我理恵)
一圓克彦(いちえんかつひこ)・プロフィール
一圓克彦事務所 代表
製造業、福祉事業、IT事業、飲食業など、大小7業種の企業経営を自ら経験した“実践型”のリピーター・ファン創出コンサルタント。2代目経営者として経営を行った年商160億円企業では、リピーター・ファンの創出により、6%の顧客離れ防止で利益率を21%改善、離職率をゼロにし、事業を成長させる。
現在は、「リピーター・ファンこそが大切にすべきお客様」という信念のもと、講演やコンサルティングにより、全国の企業や各種団体の利益改善を支援している。自らの実体験に基づいた“リピーター・ファン作り”に関する講演やセミナーは随所に笑いを取り入れたエンターテイメント型。「大笑いしながらも実践できる学びが豊富」「あっという間の120分だった」「商売の考え方が180度変わった」などと全国で反響を呼び、その登壇回数は2年間で500回に及ぶ。2010年には、実践に基づくノウハウをまとめた著書『0円で8割をリピーターにする集客術』(あさ出版)を出版。発売後、1週間で増刷となり、Amazonランキングの総合1位を獲得するベストセラーに。2011年には、TSUTAYA全国講師オーディション・準グランプリを獲得。
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◆一圓克彦オフィシャルサイト
http://www.ichienkatsuhiko.com/
◆日刊メールマガジン【カンドコロ】
http://www.ichienkatsuhiko.com/mailmagazine/
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DATA:
32歳(男性)東京都出身/現在の仕事はウェブデザイナー/
22歳から26歳までビジネス什器の営業を担当/
26歳から31歳までIT系企業でウェブ制作を担当/
32歳で独立開業
メイン商材:ウェブ制作、バナー等デザイン業務